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第十一話 「塀の中」

「令和らくご改造計画」

#7

 そして数日後。とんでもないニュースが飛び込んできた。

 囚人前座 脱獄

 思わず二度見した。でん吉のことだった。

 なんでも、彼は逮捕される前に、施設のシステムへ侵入する時限式のプログラムを仕込んでいたらしい。そのプログラムが発動し、施設全体のシステムが一時的に麻痺。その隙を突いて脱走したというのである。

 現在、行方不明。

 僕は頭を抱えた。おい、でん吉。寄席のトリを取る夢はどうした。元囚人の皆さんで客席を埋めるんじゃなかったのか。それでいいのか。

 そして、でん馬師匠の顔が浮かんだ。

 僕は居ても立ってもいられず、電話をかけた。

 「師匠、この間は刑務所でお世話になりました」

 我ながら妙な挨拶だ。

 「それにしても師匠、ニュース見ました。でん吉くん、大変なことになりましたね」

 すると師匠は、少し笑った。

 「ああ」

 そして、あっさりと言った。

 「迷惑かけてすまねえな」
 「いえ……」
 「まあ、あいつが戻ってきたら、また色々教えてやってくれ」

 僕は耳を疑った。

 ……戻ってきたら?

 まだ戻る前提なのか。すると師匠は続けた。

 「罰として坊主頭だな」

 そう言って笑う。笑ってる場合か。まあ囚人はすでに坊主頭だから、洒落のつもりなんだろう。

 だが、さすがに笑えなかった。いくらなんでも師匠として呑気すぎて、恐ろしさが勝つ。

 ──いや、しかし。

 冷静に考えると、どうにも腑に落ちない。

 でん吉の行動には、一貫性がないのだ。寄席のトリを目指す。そんな話をしていた人間が、なぜ脱獄する。どう考えても合理的ではない。

 彼は落語家になりたいはずなのだ。なのに、なぜ。

 そこまで考えた時、ふと、刑務所で見た真っ黒な目が頭をよぎった。

 最近の前座さんたちは、時々おかしい。まるで一瞬だけ別人になったような顔をする。何者かに操られているような。そんな馬鹿げた考えが浮かんだ。

 だが、すぐに首を振る。いやいや。そんなのはSFだ。あり得るわけがない。

 ……けれど。

 やはり最近、楽屋の様子がおかしい。

― 続く―

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