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第十一話 「塀の中」

「令和らくご改造計画」

#5

 そんな話が一段落したタイミングで、僕は本題を切り出した。

 「ところで、あの、でん吉くん」
 「はい」
 「落語家の事務作業を代行するAIを作れないかな」

 でん吉は少し考えた。

 そして静かに答えた。

 「できないことはありません」
 「おお」

 思わず身を乗り出す。しかし彼は続けた。

 「ですが、今の僕には作れません」
 「まあ、そうだよね」
 「ここから開発するのは難しいです」

 そして残念そうに言った。

 「僕が戻るのを待ってください」

 すると、でん馬師匠も頭を下げた。

 「すまねえな」
 「ああ、いえ。師匠」
 「うちの馬鹿弟子が戻るまで待ってやってくれ」

 やっぱり戻すつもりなんだ、と内心引っかかる。

 しかし、そこで僕はあることを思い出した。以前、オチログ事件の後、楽屋には一つのお達しが出ていた。

 「前座はアプリを開発してはいけない」

 というものである。前座たるもの、修業以外の活動は認められない。つまり、でん吉が戻ったとしても、すぐには作れない。

 そのことを伝えると、でん馬師匠は腕を組んだ。

 「そうだったな」

 そして指を折って計算を始める。

 「まあ、刑期が三年」

 嫌な数字が聞こえた。

 「出てきてから前座修業をやり直して三年」

 淡々と続ける。

 「合わせて六年だな」

 そう言って、でん馬師匠は笑った。

 「ちょいと辛抱して待っててくれ、兄ちゃん」

 やはりこの人は、三年も服役するようなことをした弟子に対して、出所後の復帰を完全に前提として話している。なんというか。改めて落語界というのは懐の広い世界なのかもしれないと感激する。

 だが、そんなわけで、AI開発計画は頓挫した。

 しかし、でん吉が元気そうだったことだけは救いだった。

 以前のでん吉は、常に難しい顔をしていた印象がある。それが今日は妙に生き生きとしていた。だから僕も少し安心した。