みちのくツバメ旅

「浪曲案内 連続読み」 第12回

桜の下の一期一会

 日本全国から観光バスでたくさんのお客様がやって来ます。

 美しい桜を鑑賞したあと、ステージのある広ーいテントのテーブルに座って、屋台で買った岩手グルメを召し上がっている。そのお客様に、浪曲を聴いていただきます。一太郎・美が展勝地で浪曲をやると知っていらしてくださったお客様もいらっしゃいましたが、ほぼ全ての方が浪曲を聴くのは初めてです。桜が目的でいらしているお客様ですから当然です。

 いつものように浪曲台にテーブル掛けを掛けて、という形で始めましたが、背後の北上川から吹いてくる風がものすごい。テーブル掛けが風にあおられて、卓上マイクも飛んでいく勢いです。何回かやっているうちに、このスタイルは諦めました。浪曲台はなくし、スタンドマイクにして、大道芸スタイルに切り替えました。

 美さんも三味線抱えて、宮沢賢治よろしく『風ニモマケズ』。芸人魂に火が付いて、いつもの舞台とまた違う嬉しさ・楽しさ・やり甲斐を大いに感じました。

 観光バスのお客様はバス出発の時間がありますので、テーブルでグルメを召し上がれるのは15分~20分。浪曲の楽しみ方講座と『展勝地ものがたり』は当初30分ありましたが、ネタを削って最終的には17~18分に試行錯誤しながら磨きました。

 浪曲が浪花節、さらに前身の芸能、祭文語り、説教節と云われた時分は、大道芸。葦簀(よしず)を張ってお客様が芸に集中しやすい形にした理由もよく分かりました。

 大道芸から小屋、寄席、劇場へと公演の場の変化があった浪曲の歴史。しかし浪曲を生で聴いたことのない人ばかりの現在、屋外でたくさんの方に聴いていただけることはとてもありがたく、さらなる工夫が必要と感じました。

 そして北上の自然を感じながら、浪曲が初めてのお客様の前で、舞台をさせていただける気分は爽快爽快。