NEW

〈書評〉 新宿末広亭 令和の定点観測 (長井好弘 著)

「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第14回

見続けた人だけが気づく芸の秘密

 本書で気がつくのは、同じ芸人の同じ話題が繰り返されることである。

 単行本をまとめる際の作業としては、重複する箇所は削って整理するのが普通だから、少し珍しい例ではある。単行本の元になっているのはAERA DIGITALの連載だ。時評はその折々の話題を記録するためのものだし、それが繰り返されたからといって削るというのもおかしな話ではある。

 きちんと数えたわけではないが、もっとも多く繰り返されるのは宮田陽・昇のエア地図ネタではないだろうか。つまりそれだけ、長井が末広亭で観たのである。

 エア地図をご存じない方のために、以下引用する。

 その他にも、あまりに寄席向きで他の色物にもたびたび本歌取り(ほんかどり)されるねづっちの強さ、聴いているうちにスリリングな気持ちになる柳亭明楽の不思議な魅力など、定点観測の視点だからこその指摘があちこちにある。自分では気づかなかったのは、林家木久蔵に関するくだりだ。

 私はこれに気づいていなくて、長井の文章に教わった。そうだったのか。