〈書評〉 新宿末広亭 令和の定点観測 (長井好弘 著)
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第14回
- 落語
- 講談
- 浪曲
- Books
杉江 松恋
2026/06/20
寄席には、また新しいご縁が生まれていく
去る人ばかりではなく、やってくる人についての記述も多い。
最近は落語協会や落語芸術協会に属していない人が定席に出演することも増えた。特に顕著なのは落語芸術協会で、五代目円楽一門会や落語立川流など他の落語家団体、浪曲の玉川太福や活動弁士の坂本頼光といった他ジャンルの芸人を積極的に迎え入れている。
太福が誘い水になって姉弟子の奈々福、後輩の広沢菊春や国本はる乃といった日本浪曲協会所属の芸人も準会員となったし、坂本頼光の兄弟子である片岡一郎もやってきた。
令和七年一月下席・夜の部は、玉川太福が浪曲師としては初めて末広亭でトリをとった、記念すべき興行である。その日の出演者が「とっておきのネタを演じながら、さりげなく浪曲と太福の話題をちりばめる」と様子が好ましく描かれている。
寄席はチームプレーとよく言われるが、このときの玉川太福主任興行ほどそれを痛感させられるものはなかったように思う。私が足を運んだのはたしか9日目で、太福は十八番の「地べたの二人」から「愛しのロウリュ」を演じたのだった。「今日は北村会長がいないからいいけど、俺こんなことやって大丈夫かな」と首を傾げながらの口演であった。なぜ「大丈夫かな」なのかは、「愛しのロウリュ」をご覧いただければわかると思う。
そんなこんなで12ヶ月73興行、話題が詰まった1冊であった。著者にはご苦労様と言うしかない。齢を重ねると、寄席の椅子に座るのも結構大変になる。末広亭の場合は左右に桟敷席がある。私は空いていればそこに座ることが多いのだが、通路に面した前方はよくても、混んでいて桟敷の後方しか空いてないと、結構な難行なのである。長井もそこに座る場面があり、辛かっただろうなあと同情した。
巻末にはありがたいことに索引がついており、どの芸人がどこのページに登場したかがわかるようになっている。チェックしておくと、これから聴きたい人の目安をつけるのにも役立つはずだ。私も柳家三之助に関するくだりを読んで、近いうちに聴きに行かなければと心にメモをした。柳亭明楽も。
(以上、敬称略)

- 書名 : 新宿末広亭 令和の定点観測
- 副題 : 全七十三興行通い詰め
- 著者 : 長井好弘
- 出版社 : 朝日新聞出版
- 書店発売日 : 2026年6月
- ISBN :9784022521439
- 判型・ページ数 : 四六判・424ページ
- 定価 : 3,300円(本体3,000円+税)

- 書名 : 新宿末広亭 春夏秋冬「定点観測」
- 著者 : 長井好弘
- 出版社 : アスペクト
- 書店発売日 : 2000年12月
- ISBN : 9784757208087
- 判型・ページ数 :A5判・360ページ
- 定価 : ―
(毎月19日頃、配信予定)
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