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三遊亭小歌という落語家がいた

「二藍の文箱」 第14回

三遊亭小歌という落語家がいた

向こうの寄席は今日も賑やか(画:ひびのさなこ)

三遊亭 司

執筆者

三遊亭 司

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 おい、司。おまえ、2月中席トリなんだってな。いつでもいいから若いの大勢集めとけ、俺の客に伊豆栄でもって鰻ごちそうさせるから。

 着信通知に「三遊亭小歌」の文字が出る。着信を押して電話に出ると、叔父貴である小歌師匠のはなしはいつだって単刀直入で、挨拶もなにもありゃあしない。

 そんな小歌師匠の訃報に楽屋で接したのは、5月中席のことだったが、協会からの発表は6月16日のこと。20日〆切のこの原稿を、一から書き直すことにして、すこしだけ小歌師匠のことを書くことにする。

 と、いっても書けないことの多い、昔気質の藝人だったが。

 結果的に晩年という言い方になるが、ここ一年、わたしは小歌師匠とふれる機会が多かった。と、いうのも、わたしの弟子の名前「歌坊」は小歌師匠の前名だからだ。

 小歌師匠宅に歌坊の件でお願いにあがった時、ちょうど師匠は引っ越しの真っ最中で、落語全集や音源などをわたしがお預かりすることとなった。

 おまえよ、小歌の名前もやるからよ。

 と、「小歌」の印鑑から、生前ご家族が決めてくれていた集合型の墓地の管理カードまでわたしにくださった。正直ありがた迷惑だが、これらを使うのはまだまだずっと先のことだと思っていた。

 いや、師匠、わたし「小歌」はいらないんで、これ、じゃあ、一応は預かりますよ。

 そのあたりのことは、以前『二藍の文箱』でも触れている。