〈書評〉 浪曲、女子高へ行く (新井勝治 著)
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第16回
- 浪曲
- Books
杉江 松恋
2026/08/30
続きのない物語
『浪曲、女子高へ行く』の後半は、その残留日本人問題に関する記述が主となっている。
もう少し浪曲師としての活動についてページを割いてもらいたかったとは思うが、当時の国友にとっての使命がそれだったのだから、仕方ない。まったく理解がなく、政策化を行う気もない厚生省(当時)を相手に、国友が孤軍奮闘するさまは非常に情熱的である。
金を無駄遣いするばかりで何も効果的な施策を打ってくれない現在の政府を見ると、そういうところはまったく変わっていないのだな、と暗澹たる気持ちにさせられる。国友忠のような人がいかに得難いか、ということでもある。
それにしても国友忠は謎の多い人だ。いつかちゃんとした評伝が書かれるといいのだが。前出の「私の浪曲史」最終回は、こんな一文で終わる。
――その苦労談とか(注:戦後の浪曲ブームに関すること)、私個人の事でも、父親は学者を希望し、私も、柔道も角力も強くて少年航空兵志願だったのに、突然、浪界に入ってしまった事情とか、今では到底行かれない、樺太、朝鮮、満州などを巡業した時の話とか、放送浪曲を作る為に過去に覚えた物をすべて捨ててしまった事とか、まだまだ話は一杯ありますが……。
ありますが、「丁度時間となりました。あまり長いはお退屈。この続きはまたの機会と致しまして、先ずはこれにて止めます」と終わってしまうのである。「この続き」読みたかったのだけどなあ。
(以上、敬称略)

▼杉江松恋 X

- 書名 : 浪曲、女子高へ行く
- 著者 : 新井勝治
- 出版社 : 朝日新聞出版
- 書店発売日 :2001年6月15日
- ISBN : 9784021000515
- 判型・ページ数 : 四六判・200ページ
- 定価 : ―
(毎月29日頃、配信予定)
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