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第十五話 「キモノの呪い」

「令和らくご改造計画」

#12

 服子は、怯えたように師匠方の方を見た。

 「私、この兄さん、怖いです」

 すると周囲の師匠方が、すぐに服子へ駆け寄った。

 「大丈夫かい」
 「何か嫌なことを言われたのか」
 「新作派の言うことなんて、気にしなくていい」

 誰一人、僕の話を聞こうとしない。

 「いや、さっきまで、あそこで笑ってたんですよ!」

 そう訴えても、師匠方は服子を囲んで心配している。一体、どうして落語家というものは、若い女性にこうも簡単に騙されるのだろうか。僕は、師匠方に守られながら楽屋へ戻っていく服子の背中を、じっと見つめた。

 その時だった。服子が、くるりとこちらを振り返る。その顔を見て、ぞっとした。あの目だ。目玉が真っ黒で、その奥の闇がどこまでも深く続いているような、飲み込まれそうな目をしていた。

 近頃の前座さんは、理解不能な行動を取った後、必ずこの目をしている。

 「服子。やっぱり、お前も──」

 声をかける。妙な沈黙があり、それから服子は、軽く首を傾げた。

 「兄さん、何の話ですか?」

 その時には、もう元の彼女へ戻っていた。いつも通りの、愛嬌のある前座さんである。

 その後、何度か服子と話をした。しかし、床屋の“アレ”を師匠方へかけて回っていた時期の記憶は、かなり曖昧なようだった。これも、同じだ。前座さんたちは、あの目をしている前後の記憶が曖昧になる。一体、何が起きているのだろうか。そろそろ、本気でこの現象と向き合わなければならないのかもしれない。

……やはり近頃、楽屋の様子がおかしい。

― 続く―

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