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プロレタリアの街

「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回

新開地の洗礼

新開地という街は、なかなか特殊な街だ。

今でもワンカップ大関を握りしめてチェイサーに

ストロングゼロを飲むおじさんがパチンコ屋に全力でメンチを切っていたり

おばさんが路上で酒を飲みながら、宇宙と交信していたりする街だ。

学生時代、僕はこの新開地の街でバイトをしていた。

20数年前の新開地は、今よりずっと汚くて薄暗い街で

酔っ払いが路上で寝てることも当たり前で、酒とギャンブルと女性への欲望が渦巻く街だった。

新開地の駅から地上に上がって、一本隣の筋をまっすぐ行き

いかがわしい店の立ち並ぶ通りから細ーい路地を入ったところにある土木作業員の詰所

それが「F産業」。

朝7時半に出勤して、現場まで移動して8時から17時までの肉体労働、休憩は2時間で、その日に取っ払いでもらえるという貧乏学生にはありがたいバイトだった。

友だちに紹介してもらったのだけど、どうやってここを見つけたのか聞くと

「いや、たまたま拾った新聞読んでたら、三行広告に出とってん」。

拾った新聞を読むというところがもうすでに社会不適合者の片鱗が見えているのだけど

そこからバイト先を見つけ出した嗅覚はすごいものがある。

ちなみに三行広告というのは、スポーツ新聞とかに載ってる「尋ね人」や「訃報」とかを載せる広告欄で、そこには求人もたくさん載っている。

「土木日払い1万円 F産業」

と書かれた広告を見て応募したら、事務所に顔出してくれと言われて住所と名前と連絡先を書いたら、次の日から出勤になったそうだ。

「お前もこいや、その日に金もらえるで」

当時、2ヵ月に1回、携帯電話が止められていたような貧乏学生だった僕は、すぐに事務所に行き、次の日から現場に出た。

初日の仕事は、ある“銀行”の解体作業。

支給された新品のヘルメットに、安全靴、真っ白の軍手を身につけての初現場。

僕らの仕事は、地下の金庫のコンクリートを砕いたものを袋に入れて地上に持っていくという作業だ。

土嚢袋に入れられたコンクリを階段を使って延々と運び続ける。

1回や2回だったら楽勝なのだが、これを8時間だ……。

しんどいなんてもんじゃない。

無限に湧き続けるコンクリを袋に詰める。

ピラミッドを作ったエジプトの民は、こんな気持ちだったろう。

単純な肉体労働はこんなに辛いのか。。。

初日の洗礼を受け、疲労困憊で事務所に戻ると

「お疲れさん!!」

と所長から渡された日給は2500円だった。

「え!? 2500円!? に、日給1万円じゃないんですか!?」

と聞くと所長は

「いや自分、ヘルメットと安全靴持ってないやろ? あれ天引きやねんわ~」

支給されたと思っていたヘルメットは、実は給料から天引きされていたのだ。

「え? え? そうなんですか? う、内訳は?」
「細かいこと気にするな~きみ!! ヘルメットが3000円、安全靴が2000円、軍手が500円やな!!」

軍手500円!?

どんな高級軍手なんだ!! コンビニでも100円くらいで売ってたはずだ。

ヘルメットも3000円もするのか?

この安全靴も、本当に安全なのか疑わしいほど、ちゃちい作りだ。。。