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天狗裁き、 親子酒、 二番煎じ
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第十五回
- 落語
林家 はな平
2026/07/06
四十五席目 二番煎じ (にばんせんじ) ★★★
[ワンポイント]
派手な出来事が起こる噺ではない。それでも古くから愛され続けてきたのは、登場人物のやり取りが実に味わい深いからである。冬の番小屋で始まる小さな酒宴と、それを見つけた同心。最後に交わされる一言には、江戸らしい粋が詰まっている。
◆【あらすじ】
ある冬の晩、防火のための夜回りを町内の旦那衆が行っている。
寒さに震えながら夜回りをした一同が番小屋に帰ってくる。火鉢を囲んで酒を持ち寄ったり、猪鍋をしたりと、にわかの酒宴が始まる。
そこへ番小屋の管轄をしている廻り方の同心(どうしん:町奉行所の下級役人)が様子を見に来る。
慌てる一同は、必死で宴会の様子を隠そうと、鍋に座ったりして奔走するが、火にかけてある酒の鉄瓶は隠せない。旦那衆はなんとか誤魔化そうと「これは煎じ薬だ」と言うが、同心は『近頃、風邪気味だから』と湯呑みに入れて飲むと、酒だと気づく……
◆【オチ】
どころが、同心は「結構な煎じ薬だ」とおかわりを飲み、猪鍋も見つけて食べる。さらに酒のおかわりを頼む同心に
旦那衆 「もう煎じ薬はありません」
同心「左様か。では拙者が町内をもう一廻りして参るので、その間、二番を煎じておけ」
◆【解説】
とても粋なオチである。何が粋かは説明が難しいが、とにかく粋だと思う。
同心は酒だとわかって「もう一度作っておけ」と言えば良いのだが、旦那衆が「煎じ薬」と誤魔化してきたので、それに合わせて「二番を煎じておけ」と言うのが可愛い。「ここで待つから」でもなく、「町内をもう一廻りして参るので」というのも奥ゆかしくて良い。
火の用心というと、子供の頃の町内会でやったことを思い出す。故郷の福岡県福岡市早良区の某所。町内の子供衆を先頭に、後ろから大人が付いてきてくれるのだ。「火の用心!(チョンチョン)マッチ一本、火事の元!(チョンチョン)」と口上も鮮明に覚えている。ふざけて「マッチ百本!」と言い合った光景まで覚えている。
みんなで町内を廻り、最後は公民館に集まってお母さん連中が作ったぜんざいを食べる。もちろん冬場の行事なので、このぜんざいが冷えた身体に沁みるのだ。
粒あんで汁気が多いので、あれはお汁粉(おしるこ)ではなく、ぜんざいだ。口直しには黄色い沢庵(たくわん)が山のように切ってあって、ぜんざいで口が甘くなったら沢庵をかじる。沢庵で塩気を感じたら、またぜんざいを食べる。ぜんざい沢庵ぜんざい沢庵の無限ループだ。火の用心よりそれが楽しみだった。
そういえば、あの真っ黄色の沢庵を最近食べてない気がする。

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(毎月6日頃、配信予定)
●演目一覧(2026年7月時点)
あ行 明烏 あたま山 井戸の茶碗 牛ほめ お菊の皿 親子酒
か行 片棒 看板のピン 紀州 きゃいのう 金明竹 甲府い 子別れ 権助魚
さ行 真田小僧 七段目 芝浜 寿限無 崇徳院 粗忽長屋 ぞろぞろ
た行 大工調べ たいこ腹 たがや 狸札 短命 茶の湯 壺算 つる 転失気 天狗裁き 道灌 時そば
な行 二番煎じ にらみ返し 抜け雀 ねずみ 寝床 野ざらし
は行 不動坊 堀之内
ま行 まんじゅう怖い みそ豆 百川
や行 淀五郎
ら行
わ行
―― 林家はな平『オチ研究会 なぜこのサゲはウケるのか?』連載一覧
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